「自分の子って、本当かわいい。目の中に入れても痛くない」
まわりのママ達は言う。
それ、ほんと?
目の中に入れたら痛いでしょ。
私は小さい頃から子どもが好きだった。
自分よりも年下の子たちを可愛がり、
赤ちゃんには無性に心が惹かれた。
母親になる夢もあった。
でも、他のママたちのようにデレデレな母にはなれず、
疑問を抱いていた。
我が子はかわいい。愛しい。大切。
でもデレデレできない私って、なんだろう。
考えてみれば
「ちゃんと育てあげる」の意識が
強かったのかもしれない。
自分ではそんなつもりなかったけれど、
まわりの人にはよく言われた。
安全に、かつ自由でのびのびと
させるにはどうすべきか、と考えすぎ、
正解が出ない問いに、
頭の中が凝り固まっていた。
どうしたら、他のママたちみたいなデレデレ母になるのだろう……。
そもそも、恋に恋する学生時代の恋人にも
デレデレした覚えがないのだから、
そんな自分はいないのか。
しかしやっぱり、デレデレ母にもなってみたい。
そんな時、一人のママ友と出会った。
彼女の褒めっぷりは素晴らしい。
いつでもなんでも、娘を褒める。
「ほんと、かわいい!」
「大好き!」
些細なことでも愛を伝える彼女の姿勢は衝撃だった。
無条件に愛するって、こういうことなのか。
それから、ママ友の真似をしてみることにした。
デレデレ母に変身ミッション
開始!
とは言っても、
彼女のままに真似るのはむず痒い。
まだ、本心のままに表現するには
程遠いぎこちなさがある。
そこで、設定を若干変えた。
それは「女優」になった気分で伝えるのだ。
私は女優。
私は女優。
私は女優。
思い込みの中で、表現すると、
だんだん楽しくなってくる。
「かわいい!」「素敵!」
女優であればいくらでも言える。
そうこうしている内に、
不思議かな。
娘や他の子どもたちがもっと可愛く感じてきた。
フリが本物に変わった瞬間だ。
そうか。こうやって言葉にしてみればいいのか。
コツを掴んだ私は、
次はさらなるミッションを追加した。
娘に毎日「大好き」を伝えるのだ。
朝起きて「大好き」
寝る前に「大好き」
逃げられながらもハグをする。
「女優」であれば、お安い御用‼︎
そして、気づけば
「ママ、宇宙で一番大好きだよ」と娘から告白され、
嬉しくて、思いっきりハグする私がいる。
「私の方が大好きなんだから!」
まるで、付き合いたてのカップルのようだ。
あぁ幸せ。
あと5年もしたら、
倦怠期に入るのだろうか。
それはそれで、しあわせか。
それでも、大好きだよと
当たり前のように伝える母であろう。
今日も、寝る前に大好きを伝える。
でもやっぱり、目の中に入れるのは、痛いよな。