離婚してシングルになった事実を人に伝えると、
「実家は東京だよね。帰らないの?」
と、たいてい聞かれる。
はい。
今のところは、帰りません。
だって、田舎で生きる私が好きなんですもの。
東京下町で生まれ、
東京下町で育った私。
実家は最寄り駅まで自転車で十分。
0時まで飲み歩いても、帰る電車がある。
お店の種類も豊富で、
必要なモノがすぐに手に入る。便利な街だ。
それなのに、私は窮屈だった。
「私に足りないものって何?」
ふとした時に沸き起こる空虚感。
物質的には満ち足りているはずなのに、
常に刺激を求め、
不足を埋める何かを探していた。
結婚と同時に、長野に移住。
驚いた。
自然が多い。
目に入るのは、山、空、川、湖。
息を吸い込むと、
透きとおる空気が身体の隅々までいきわたる。
空気ってこんなに軽かったんだ。
遠くからは、
カッコウの鳴き声が聞こえ、
思わず立ち止まる。
カッコウって、本当に「カッコウ」と鳴くんだね。
東京女子だった頃は、
そんなことも知らなかった。
五感が素直に喜んでいる感じがした。
東京と長野。
東京を歩いていると、
目に入るのは看板、電車、
ビル、車、広告、
キャッチのお兄さん。
自然ってどこだろう?
学校では、
地球には青と緑が溢れていると習ったが、
時々現れる公園と空以外、
ほぼ人工のモノだ。
宇宙から見た地球のイメージとはかけ離れている。
不自然な姿だ。
一方、長野はどうだろう。
カーテンの隙間から
燦々と差し込む太陽の光で朝を知る。
まぶしい。
窓を勢いよく開けて、
澄んだ空気を吸い込む。
一気に身体が洗われる感覚がする。
耳には心地よいせせらぎの音。
近くの田んぼで蛙の合唱も繰り広げられている。
これは、信州で生きる人にとって、
フツウの日常。
全く特別ではないフツウの日常が、
どれだけ豊かな時間なんだろう。
今ここで豊かさを感じるには、
ビルやアスファルトの
コンクリートジャングルは必要ないらしい。
人間の身体は、
体内に取り入れたモノでできあがる。
食事に限らず、
五感全てに入力される刺激が、
私を創り上げている。
豊かさを創り上げている。
だとしたら、
どんな私で生き続けたいか?
どんな私を生成していきたいか?
どんなモノを体内に取り入れたいか?
自分に問いかけ直すと、
身体の感覚が教えてくれる。
自然の豊かさを感じていたいと。
私をありのままでいさせてくれる。
だから、
田舎で生きる私が好きだ。