【コラム】レースのスカート

「あのさ、何枚、仮面をかぶっているの?」

大学一年生の時、部活の先輩に言われた。
あの時の衝撃は忘れられない。

出会って数ヶ月の先輩に気づかれていたらしい。

こんなに上手に
仮面を付け替えているっていうのに。
図星でとても恥ずかしかった。

人とうまく付き合うために、
私は自分でも数えきれないほどの仮面を持っていた。

シーンによって
自由自在に使い分ける素人女優。
八方美人。

ただし、どれも、偽物のワタシ。

おかげで、仮面の中の本当の自分がわからなかった。

「ゆみは、何が好きなの?」
「ゆみは、何したいの?」

仮面をかぶっていない私に問いかけられた質問に、答えが出ない。

私って、何が好きなんだろう?
本当は何がしたいんだろう?

本心がわからず、驚いた。

それから、
自分の「好き」探しの旅が始まった。

例えば、身につける色。

それまでは
無難な地味色を選んでいたが
実はピンクに心惹かれる私もいた。

でも、どこか歯痒さがある。

私なんかがピンクを身につけて
いいんだろうかと卑下する気持ちと共に、

女子らしくいたいという
小さな乙女心も大切にしてみたくなった。

それならば小さいモノから……よし。
いつも持ち歩くスマホケースをピンクにしよう!

以前の私なら絶対に選ばないピンク。

初めは恥ずかしくて、
カバンにコソコソ潜ませていたが、
カバンを開くたびに
目に入る女性らしい色。

ふふふと心が明るくなる自分がいた。

持ち続けるうちに、
少しずつ自分に馴染んでいく感覚。
キュンである。
私は、ピンクも、好きらしい。

赤いワンピースにも挑戦した。

大好きなカフェの
店員さんのユニフォームが、
真っ赤なセーターでステキだったのだ。

私も赤を着てみたい。

「そういえば、癒し系女子になりたいって思っていたな」
なんて高校時代の理想像を
思い出しながら、
くすみがかった赤の麻ワンピースを試してみた。

意外にもしっくり馴染む。
かわいいじゃん。

恥ずかしくて
人前では口に出せなかったけれど、
赤いワンピースを着ている自分が
好きだった。

そして今では
パープルのレーススカートを履いている。

これぞ、女子‼︎

東京港区で凛と働くレディをイメージし、
信州田舎でレーススカートを履く
アラフォー女子。

いろんなギャップに、キュンである。

ピンクも、赤も、パープルも、
そして地味色だって
私は好きだ。

どれも本心。

今でも仮面はたくさんある。
その時々で、使い分ける。

でも、明らかに違うのは、
どの仮面を使っている私も好きだ。

仮面は何枚あってもいい。

「先輩。私の仮面、どれが似合いますか?」
今なら堂々と聞けるだろう。

とびっきりの笑顔で、
変身ショーをしてみようかしら。

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